会話の抽象度をコントロールする
仕事における会話には様々なものがあります。会話のテーマには方針や概念などの抽象度が高いものもあれば、現場で起こった個別の出来事のように抽象度が低いものもあります。
今回は会話における抽象度のコントロールについてまとめます。
会話の抽象度をコントロールする
具体化
- 理解の促進
- 具体的な情報や具体例を添えることで相手の理解を促す
- 具体的な情報や具体例を確認することで自分の理解を深める
- 明確化
- 自分が伝える内容の曖昧な部分を明確に伝えるために具体的な情報を添える
- 相手が伝える内容の曖昧な部分を明確に理解するために具体的な情報を確認する
- 抽象度の高い情報だけで伝わらない場合、具体例で相手の理解を促す必要がある
- 不明確な問題を元に意思決定をしてしまいそうな場合、具体的な情報で意思決定を確度を高める必要がある
チャンクダウンをする場合は、
- When
- Where
- Who
- What
- How
抽象化
- 共通パターンの発見 - 個別の事象に共通するパターンを発見し、取り組みの適用範囲を広げる
- 会話の効率化 - 大まかな方針や施策を検討する際に、会話の抽象度を高く保つと会話を効率化する
- 要点の理解 - 要点の理解を関係者で共有する
- 根本原因の発見 - 表面的な事象だけではなく、根本的な解決につなげるために問題の本質を捉え、根本原因を発見する
具体と抽象の往復
例えば、
- チャンクアップ - 方針の会話など抽象度の高いやりとりをしていた
- 観察 - 2者の意見が噛み合わないが、そもそもお互いが考える前提が異なりそうに見える
- チャンクダウン - お互いの意見の前提を把握するために具体例を元に意見の違いの詳細を把握する
- 観察 - 双方の意見の背景が伝わり、前提の共有ができているように見える
- チャンクアップ - 改めて方針単位の会話に戻る
- チャンクダウン - 方針を決定できたので、それを元にした施策の概案を具体的に検討する
- 観察 - 施策の概案を決めればいいが、概案の検討に不要な詳細に立ち入り過ぎている人が現れた
- チャンクアップ - 具体化し過ぎた話題を概案を決めるのに必要な抽象度に戻す
このとき重要なのは、場の全員が今どの抽象度の話をしているのか理解できていることです。
プログラミングとの対比
例えば、アーキテクチャーの会話をしているときに、理解が進まなそうなメンバーに向けて具体的な実装を添えてアーキテクチャーの利用例を解説し、理解が進んだら改めてアーキテクチャーレベルの話に戻るようなやりとりは会話の抽象度をコントロールしています。
抽象度のコントロールがない状態の影響
- 議論が長引く
- 議論の内容を誤解する人が増える
- 議論についていけず意見を出せない人が増える
逆に会話の抽象度のコントロールに慣れた人が増えると、個別のやりとりや会議に必要となる時間は驚くほど短くて済むようになります。ここは体感としては馬鹿にならないくらい大きな時間差があると考えています。
例えば抽象度のコントロールに慣れて素早く論点を理解し、不明点をお互いに具体化して認識を揃え、素早く元の抽象度に戻って議論を継続できるような場を作ることで仮に15分で着地する議論があったとします。逆に、抽象度のコントロールに不慣れで、今どの抽象度の話をしているか把握できないことで、方針の話をしている人と個別ケースの話をしている人で意見が対立したり、一度具体的な話題に入り込んだらあっという間に本題からそれていったり、ということを繰り返していたら1時間のミーティングを2回実施しても議論が着地しないこともあるでしょう。そして、そのインパクトは「参加人数 x その人達の平均給与」分の影響があります。単発だけではなく、こんなことを年間で仮に50回繰り返したとしたら、その差は膨大です。
まとめ
会話の抽象度をコントロールすることはかなり重要なスキルの割に注目されることが少なく感じています。一方で、ソフトウェアエンジニアであれば、普段から抽象度のコントロールは慣れ親しんでいるはずです。設計時に考えている抽象度のコントロールを普段のコミュニケーションに適用すればいいわけです。きっと他の職種の人よりもハードルは低いはずです。